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劇場版 「涼宮ハルヒの消失」 [MOVIE&DVD]

※ 作品の内容に触れる記述があります。予めご了承ください。

フランスの詩人、ジェラール・ド・ネルヴァルは、遺作『オーレリア』の冒頭において、次のように述懐しているが、『涼宮ハルヒの消失』は、およそこんな物語である。

夢は第二の人生である。
私は、眼に見えない世界からわれわれをへだてている象牙もしくは角でできた扉を、戦慄を覚えずにくぐることができなかった。
睡眠の最初の数瞬は死の映像である。
どんより曇ったような麻痺がわれわれの思考をとらえる。
しかもわれわれは、「自我」が異なる姿で存在しつづけようとするその瞬間を正確にとらえることができない。
それは薄暗い地下である。
次第に明るみを増してゆくにつれて、辺獄(リンボ)に住む人々の重々しい動きのない姿が、闇と夜とから解き放たれて、そこに蒼白く浮かび上がってくる。
ついで舞台が現われて、一条の新しい光が、こうした異様な亡霊たちを照らし出し、演技させる。
― このようにして「精霊たち」の世界がわれわれの前にひらかれるのだ。
                    (稲生 永 「女神イシス変幻」 より)

「象牙もしくは角でできた扉」をくぐり抜けたキョンは、長門により改変させられた世界へと迷い込む。
そこに用意されていた「舞台」には、腰髪ハルヒや萌えキャラ長門だけでは飽き足らず、朝倉涼子という、文字どおりの「亡霊」まで待っていた。
こうして時空を越えて展開されることとなった「「精霊たち」の世界」も、やがては「死の映像」で幕を閉じることになる。
誤解をおそれずに言えば、綿密に仕組まれた “夢オチ” スペクタクルなのである。

また、本作とは直接関係ないが、「「自我」が異なる姿で存在しつづけようとする瞬間」とは、ハルヒの “憂鬱” による閉鎖空間の現出とも符合してはいまいか。
むろん、ハルヒの精神状態の分析がフロイトの手に負えるものでないことなど百も承知だが、いわゆる「イド」(あるいは「エス」)からの欲動と、それに対する無意識的防衛としての「自我」との葛藤が、あの閉鎖空間の現出という事象に象徴されているのであるならば、非常に興味深いアナロジーといえよう。

最後にもう一点。
クライマックスに流れるサティは、今まで耳にしたいかなるサティよりも、美しい。

[評価] ★★★★☆


「京アニ」 オフィシャルサイト
http://www.kyotoanimation.co.jp/haruhi/movie/


劇場版 涼宮ハルヒの消失 オリジナルサウンドトラック

劇場版 涼宮ハルヒの消失 オリジナルサウンドトラック

  • アーティスト: エミネンス交響楽団,大先生室屋ストリングス,本田聖嗣,佐々木史郎グループ,泰輝,飯室博,渡辺等,竹野昌邦,宮田繁男
  • 出版社/メーカー: ランティス
  • 発売日: 2010/01/27
  • メディア: CD


公式ガイドブック 涼宮ハルヒの消失

公式ガイドブック 涼宮ハルヒの消失

  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2010/02/25
  • メディア: 単行本

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