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「リヒテンシュタイン」展 1 [ART]

国立新美術館で開催されている「リヒテンシュタイン」展。
その名の通り、かのヨーロッパの小国を統治している侯爵家のコレクションである。

入場するやいきなり来場者を圧倒する神話画群に始まり、絢爛豪華なバロック・サロン、技巧を凝らしたクンストカンマーの工芸品、犬を連れたあのフランドルの少年も憧れたルーベンスの作品群など見所は多く、たいへん満足の行く美術展であった。
〔リヒテンシュタイン展紹介動画〕
http://www.youtube.com/watch?v=lyd1FRLzuNU

今回は、そんな由緒正しきコレクションにあって少々趣の異なる、二つの作品に注目してみた。

「復讐の誓い」

liechtenstein41.jpg
       (フランチェスコ・アイエツ/1851年)


トーンを抑えた背景に、シャープな筆致の主人公。
手法としては目新しいものでないにも拘らず、どこか新鮮に映るのは、人物の生々しさゆえであろうか。
精緻に描き込まれた二人の女性は、まるで固定背景に重ねられたセル画のキャラクターのように鮮やかに浮き立ち、今にも動き出さんばかりである。
そして、実(げ)に美しき憤怒の形相に、私はしばし恍然と立ち尽くしたのであった。

liechtenstein44.jpg


解説によると、この絵は画家の友人でもある詩人アンドレア・マッフェイの物語詩から着想を得て描かれたとのことであるが、その物語詩とやらに関する情報が一切無い。
したがって、いかなる場面が切り取られているのかについては、いささか物騒なタイトルと、作品そのものから推察するよりほかないのである。

いつか見た時代劇に、こんな話があった。
藩の公金を横領したとして、切腹の沙汰を受けた勘定方役人。
家名は断絶、家禄も没収され、失意の妻は忠義なる小者を連れて生まれ故郷へと旅立つ。
その途上、一人酒場を訪れた小者は、ならず者たちの会話から、主人が実は上役の姦計に填まり濡れ衣を着せられていた事実を知る。
小者は急ぎ旅籠に戻り、一部始終を役人の妻に報告する。
真相を知った妻は、怒りに打ち震え…と、こんな筋書きである。

シチュエーションがあまりにも違うので、この作品と重ねるには無理があろうが、「復讐」の動機として無い話ではなかろう。
あるいは色恋沙汰が絡んだ方が、美女の登場する舞台としてより相応しいのかもしれない。
ついでに、件の妻同様、事に絡んで最愛の夫を亡くすような事情なぞあってくれれば、その険しい表情に宿る色香がさらに際立ち、悲劇のヒロインとして申し分ないのであるが…

作品にはまた、謎のマスクや女が手にした手紙らしきものなど、ストーリーを膨らませるためのアイテムは様々用意されている。
秋の夜長、あれこれ考えを巡らされてみるのも一興ではないだろうか。

リヒテンシュタイン展
http://www.asahi.com/event/liechtenstein2012-13/

[晴れ]
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