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「小澤征爾さんと、音楽について話をする」 小澤征爾×村上春樹 2 [CLASSIC]

※ 作品の内容に触れる記述があります。予めご了承ください。

今回と次回の記事は、その内容から「CLASSIC」カテでの分類となっていることを、まずお断りしておく。

第1章では、ベートーヴェンの「ピアノ協奏曲第3番」について、6枚ものディスク(別掲)を聴き比べている。
かつての村上少年にクラシック音楽への扉を開かせたという、たいへん意義深い楽曲である。
私の手元にも何枚かあったはずなので、早速探してみた。
本書を読んだ印象では、グールド/バーンスタイン盤と内田光子/ザンデルリンク盤に興味を引かれていたのだが、見付かったのはグールド/カラヤン盤にゼルキン/バーンスタイン盤。
うーん、惜しい![ふらふら]

何はさておき、まずはグールド/カラヤン盤から聴く。
前稿で触れたように、村上氏はここでグールドとベルリン・フィルとの不調和を指摘しており、これには小澤氏も同調している。
さほどの注意は払わなかったとはいえ、これまで聴いてきた限りでは、違和感を持ったことなど一度としてなかった。
今、あらためて聴いてみても、特に不自然さは感じない。


ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番&シベリウス:交響曲第5番

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番&シベリウス:交響曲第5番

  • アーティスト: カラヤン(ヘルベルト・フォン),グールド(グレン),ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
  • 出版社/メーカー: ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル
  • 発売日: 2008/05/21
  • メディア: CD


第1楽章ばかりを何回か繰り返し、後に紹介する他の演奏とも聴き比べてようやく若干の違いを見出すに至ったものの、私ごときの“素養”では、全く以ってこれを不調和とは認識できない。
ソロとオーケストラとの絡みの問題なので一概には言えないが、アーティキュレーションに多少“やんちゃ”なアレンジを加えるソリストとの共演などでは、間々あることではないのか。
いや、むしろあのカラヤンとベルリン・フィルを向こうに回し地を貫いたというのであれば、小澤氏が「自由な音楽」と評するこの若きピアニストの心意気や良しとの評価があって然るべきとも思うのだが…
そういえば、グールドはバーンスタインとブラームスを共演するにあたり、自身のゆっくりしたテンポでの演奏を譲らず、結果、本番前にバーンスタインが聴衆に向かってエクスキューズするに至ったというエピソードが紹介されていた。
グールドの、グールドたる所以であろう。

ふぅ…
しかし一曲聴くのに、これだけ集中力を要するとは…[がく~(落胆した顔)]
窓を開け、部屋の空気を入れ替える。
オーバーヒート寸前の頭をしばらく冷気に晒し、気分も新たにゼルキン/バーンスタイン盤に取り掛かる。
が、これがまた曲者であった。


ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番+第5番「皇帝」

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番+第5番「皇帝」

  • アーティスト: ゼルキン(ルドルフ),バーンスタイン(レナード),ニューヨーク・フィルハーモニック
  • 出版社/メーカー: ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル
  • 発売日: 2001/12/19
  • メディア: CD


のっけから小澤氏を「ええええ」と驚愕させるほどの速いテンポで、第1楽章は幕を開ける。このオーケストラの勢いは、そのままゼルキンのピアノに引き継がれる。
単純に第1楽章の演奏時間を比べてみても、先程のグールド盤が16'15" であるのに対し、ゼルキン盤は15'32"と40秒ほど短い。
その理由については、当時流行っていた古楽器演奏の影響があるのではないかと小澤氏は推測する。
そして、このようなスタイルを以って「非ドイツ的」とも評しており、アメリカのオーケストラ(ここではニューヨーク・フィル)をベルリン・フィルやウィーン・フィルと対比させていて興味深い。
しかし、(本書では取り上げられていないが)実は第2楽章になると、グールド盤が9'25"にゼルキン盤10'54"と、その演奏時間は大きく逆転する。
本来の指示が、第1楽章はAllegro con brio(活気をもって、速く)、第2楽章がLargo(遅く、ゆったりと)であることを考えれば、ゼルキン盤の方がよりスコアに忠実と言えなくもないが、ただ、こうなると第1楽章のスピードは流行りのスタイルというだけでは説明がつかない。
ゼルキンおよびバーンスタインの、積極的な意図を感じるところである。
                                (つづく)

※ 本書で試聴している「ベートーヴェン ピアノ協奏曲第3番」
・グールド/カラヤン盤
・グールド/バーンスタイン盤
・ゼルキン/バーンスタイン盤
・インマゼール/ヴァイル盤
・ゼルキン/小澤征爾盤
・内田光子/ザンデルリンク盤


小澤征爾さんと、音楽について話をする

小澤征爾さんと、音楽について話をする

  • 作者: 小澤征爾・村上春樹
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2011/11/30
  • メディア: 単行本

[曇り]
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